Day & Coffee, 02
INDEPENDET WORK
date
家具工事
所在地:山形県山形市香澄町
用途:店舗(飲食店)
構造:RC造
竣工:2025.10
総工費:235万円
credit
担当者:OF THE BOX 追沼翼
施工:荒大工
造作家具:松川工房
アイアン什器:カンノウェルディング
スツール:秋田木工
照明:fizmic
撮影:堀内敦央
Day & Coffee 拡張計画
2019年に開業したDay & Coffeeは、かつて呉服店だった路面区画を最小限の改修で再生し12席の小さなコーヒースタンドとして始まった。初期投資は440万円。既存躯体を素直に受け止め、軒下には植栽や家具を置き、歩道側にはテイクアウトカウンターを設けた。街路にそっと溶け込む最小単位の店舗である。しかし、ミニマルな店ほど日々の運営によって使われ方が敏感に変化する。焙煎機の導入、小売やECの拡大、朝・昼・夕で異なる滞在のリズムが生まれるなかで、開業当初の構成では応えきれない小さな歪みが徐々に蓄積していった。
転機となったのは2025年、隣接テナントの退去である。拡張を前提とした計画ではなかったからこそ、この空き区画は増床ではなく、日々の営業で得た気づきを編みなおす機会となった。Day & Coffeeが街の中でどのような居場所であるべきか。事業変化に合わせて空間をどう更新すべきか。あらためて問い直すプロセスが始まった。
人数に縛られない滞在と、視線の設計
拡張で最初に向き合ったのは、滞在のつくられ方である。従来のカウンター席を廃し、視線が一点に集中しないよう動線を再構成した。入口付近には長いベンチと丸テーブルを配置し、ひとりでも複数人でも気兼ねなく腰かけられる柔らかな余白を設えた。座席をカウンターへ正対させることで視線が自然に広がり、自分の居場所を探す負荷が軽減される。滞在の始まりが軽やかになり、店全体のリズムが大きく変化した。
拡張区画の中央には、ひょうたん型の大テーブルを据えた。優しいくびれをもつ形状は人数を前提にせず、ひとりの滞在から会話、グループ利用までが衝突せず並存する。相席が強制でなく許容へと変わり、客層や時間帯に応じて場の重心が移ろう柔軟性が生まれた。奥の小上がりには初めてソファ席を設け、読書や作業など長い時間にも応える静かな居場所をつくった。スタンドでありながら、滞在の深度を受け止める空間へと進化している。
ローコストから始める、拡張する店舗設計
今回の拡張は、単なる機能追加のための改修ではない。焙煎、小売、EC、滞在といった多様な要素が日々変化するなかで、空間を段階的に編みなおす試みである。運営と設計が同じ時間軸を共有し、状況の変化に寄り添いながら成熟していく。これは小規模店舗における更新の技法として位置づけられる。
Day & Coffeeの拡張は、店舗を完成させるのではなく、成長させるという思想に基づく。街に開かれた小さな店が、必要なときに静かに編みなおされ続ける。その軽やかな姿勢こそ、スモールスケールの店舗が長い時間を生き抜くための現実的な方法論であり本計画はその有効性を静かに示している。
