Flower studio & Cafe 甚
CLIENT WORK:株式会社JIN
date
リノベーション
所在地:福井県小浜市加茂79-18
用途:店舗(飲食店)
竣工:2024.07
プロジェクト期間:2023.07-2024.07
施工期間:2024.03-2024.06
総工費:1400万円
credit
担当者:OF THE BOX 追沼翼
施工:杉谷建設有限会社
グラフィックデザイン:青柳美穂
撮影:堀内敦央
花を介して、風景を支える拠点
華道家・前野博紀氏の生家をリノベーションし「Flower cafe & studio甚」として再生するプロジェクトである。計画地である福井県小浜市宮川加茂地区は、人口減少や遊休農地の増加、鳥獣害による農地荒廃といった課題を抱える中山間地域である。
本計画では、前野氏の活動拠点を単なる私的なアトリエとして閉じるのではなく、花屋・カフェ・華道スタジオを併設した開かれた場として構え直すことで、人の往来と営みが生まれる地域拠点へと更新することを目指した。将来的には、鳥獣害の影響を受けにくい花畑の整備も視野に入れ、花を介した地域循環の起点となることを意図している。
敷地には母屋と離れからなる住居が建ち、母屋は長年にわたり増改築を重ねてきた住宅である。生活の変化に応じて付け加えられた部屋や動線は、合理性よりも暮らしの記憶を優先した構成となっており、その重なり自体が建物の個性を形づくっている。計画では母屋を中心に整備し、カフェ、花屋、華道スタジオという異なる機能を無理なく共存させる構成とした。地域の風景の一部として親しまれてきた象徴的な青い瓦屋根は保存しつつ、華道家の活動拠点としてふさわしい、静けさと緊張感を併せ持つ空間のあり方を探っている。
既存の母屋では台所と玄関が動線上の死角となっていたため、納戸側に新たな入口を設け、畳敷きであった居間を土間空間へと転換した。従来の玄関は「額縁」として捉え直し、花のショーケースとして再構成している。通り側からの視線の先に、四季折々の花のしつらえが立ち上がることで、建築そのものが花を引き立てる装置となることを意図した。
本プロジェクトは、美しい花や空間を楽しむ場にとどまらず、「持続可能な風景を支える花屋」として機能することを目指している。花を育て、扱い、届けるという営みが地域に根づき、人の手を介して風景そのものが少しずつ更新されていく。その循環を、建築が前に出すぎることなく、静かに支え続ける拠点である。
